フットサル日本代表は、2026年1月にAFCフットサルアジアカップインドネシア2026に挑む。近年、アジアのフットサルはレベルが高まっており、過去に4回の優勝歴を持つ日本にとっても、同大会を制するのは簡単ではないミッションだ。チームのさらなる強化に向けて、世界王者であるフットサルブラジル代表との対戦はこれ以上にない舞台と言える。10月17日（金）と19日（日）、北里アリーナ富士（静岡）での国際親善試合2連戦に向けての意気込みを、高橋健介監督に聞いた。

※本インタビューは10月7日に実施しました。

日本代表は特別な場所

―――現在、世界のフットサル界はどのような勢力図で、その中で日本がどのような立ち位置にいるのかを教えてください。

高橋　最新のFIFAフットサル男子世界ランキングにおいて日本は13位に位置しており、今回の対戦相手であるブラジルが1位に君臨しています。ヨーロッパではポルトガルとスペインが強く、FIFAフットサルワールドカップウズベキスタン2024でフランスがベスト4に進出と近年、実力を伸ばしています。アフリカではモロッコが躍進し、南米ではアルゼンチンが2大会連続でワールドカップの決勝に進出と、11人制サッカーの強豪国がフットサルでも強さを示しているのが現状です。

―――アジアにおいては日本とイランが2強といえる存在でしたが、現状はいかがでしょうか？

高橋　これまでAFCフットサルアジアカップで優勝した経験があるのはイランと日本だけでしたが、今は大きく変わりつつあります。AFCフットサルアジアカップタイ2024では優勝したイランに加え、タイ、ウズベキスタン、タジキスタン、アフガニスタンの5カ国が上位に名を連ね、同年のワールドカップへの出場権を手にしています（※）。ウズベキスタン、タジキスタン、アフガニスタンと、中央アジアの国々が力を伸ばしつつあることが分かると思います。また、以前はアジアカップの予選は東アジア、中央南アジア、東南アジア、西アジアという形に分かれて実施されていましたが、2024年大会からは地区による区分が撤廃されました。そのため、これまで中央アジア地区予選を突破できなかったチームが本大会に出場できるようになり、上位をうかがうようになってきました。イランと日本が2強を形成していた時代は終わりを告げたと言えるでしょう。実際、前回のアジアカップでは僅差の試合が非常に多かったですし、来年1月に行われるAFCフットサルアジアカップインドネシア2026は、どこが優勝してもおかしくない大会になると考えています。

（※）ウズベキスタンはワールドカップ開催国だったために出場権を確保していたが、アジアカップでは3位となった。

―――今回、高橋監督の就任後では初となる国内での国際親善試合が行われます。国内で試合ができる意義についてどう感じていますか？

高橋　まず、9月に行われたAFCフットサルアジアカップインドネシア2026予選で3連勝し、来年1月に行われる本大会への出場権を手にしました。本大会に向けてチームを強化するための素晴らしい経験が得られると思っています。また、そのアジアカップ予選はタジキスタンで開催されたにも関わらず、多くの日本人の方々が現地に来て、われわれを応援してくれました。ファン・サポーターの声援がなかったらどう転がっていたか分からなかったと思うぐらい、後押ししていただいた感覚があります。今回、日本国内で、より多くのファン・サポーターの前で試合ができるのは何よりの喜びですし、われわれの夢を実現させるためのパワーをもらい、心の中から湧き上がる感情を作ってくれる試合になると思います。選手たちが「代表にまた呼ばれて活躍したい」と思ってくれるような機会にしたいですね。

―――ファン・サポーターにとっても待ち望んでいた試合だと思います。

高橋　前回、国内で試合をしたのが2023年12月で、およそ2年ぶりですからね。生で日本の試合を見ていただく機会がなかなかつくれなかったので、今回は選手が躍動する姿をお見せしたいですし、試合を見て、日本代表に憧れを持ち、目指してくれる子どもたち、若者たちが増えていくことを願っています。実際、スタッフの佐藤亮コーチ／フィジカルコーチは私の順天堂大学時代の後輩でもあるのですが、私が大学生の時に代表に招集される姿を見て憧れを抱いてくれたそうです。日本代表はそういうパワーを与えられる特別な場所だと思いますし、今回の試合をきっかけにそのような流れができるとうれしいですね。

歴史的な一勝に向けてぜひ後押しを

―――FIFAランキング1位であるブラジルとの2連戦となります。

高橋　2024年のワールドカップで優勝した国でもありますし、来日メンバーもトップクラスの選手ばかりです。われわれがやるべきこと全部ぶつけて勝てるかどうか、という相手との試合を国内でできるのは非常にありがたいことですし、その中で何とかして勝利する姿をファン・サポーターの皆さんに見せたいと願っています。

―――ブラジルの注目選手を教えてください。

高橋　招集された選手全員が注目選手になるような顔触れですし、各国の強豪クラブの主力中の主力となっている選手ばかりです。その中でも見ていて面白いなと思うのはピト選手（FCバルセロナ／スペイン）ですね。何でもできますし、身長があって技術もすごく高いので、日本にとっては非常にやっかいな選手です。

―――日本代表の招集メンバーはどのような視点から選出されたのでしょうか？

高橋　まずは所属クラブでハイパフォーマンスを発揮していることです。また、環境への適用力も求めています。環境とは選手同士の関係性もそうですし、9月のアジアカップ予選でも日本とは全く異なるピッチでプレーすることになったので、そうなった場合でも実力を発揮する必要があります。また、日本人選手を相手にしているのとは違う、足が伸びてくる感覚やシュートレンジの広さなどに対応できるかどうかを含めたインテリジェンスも大切な要素となります。

―――それらを踏まえて、今回の招集メンバーの特徴を教えてください。

高橋　ベースは9月のアジアカップ予選のメンバーです。入れ替わったのは3人で、今回新たに甲斐稜人選手（ペスカドーラ町田）、山田凱斗選手（しながわシティ）、堤優太選手（名古屋オーシャンズ）を招集しました。また、2025－2026シーズン限りでの現役引退を表明している吉川智貴選手（名古屋オーシャンズ）の招集は大きなトピックだと思います。

―――吉川選手の招集にはどのような意図を込めているのでしょうか。

高橋　シンプルに、ハイパフォーマンスをしているからです。直近のFリーグカップ2025でチームを優勝に導き、MVPと得点王にも輝きました。元々、代表チームのキャプテンを長年にわたって務め、いろいろな経験をしてきた吉川選手の代わりを務められる選手が見当たらなかった部分もあります。来年1月のアジアカップで優勝するという目標を達成するためには彼の力が必要だと感じましたし、FIFAフットサルワールドカップ2028への出場に向けて今後、予選を戦う上でも、彼の経験をここで若い選手たちに伝えてもらうことは間違いなくプラスになるとも考えました。

―――あらためて、この2試合の見どころを教えてください。

高橋　ブラジルには過去21回対戦し、1分20敗と一度も勝てていません。今回も、守備の時間が非常に長くなる可能性が高いと思っています。それを覚悟した上で、それでも最後まで粘り強く、相手が嫌がることをやり続けて、勝つ可能性を少しずつでも上げていきます。規律で勝利をつかむチームを目指していますので、自分たちがやるべきことをやり切る姿を見せたいと思っています。負けるつもりは全くないですし、勝てる可能性は絶対にあるので、それを信じて最後まで戦う姿を見せたいと思っています。歴史的な一勝に向けてぜひ後押ししてください。